鬼が往く
そんな中、或る日の夜。

舎弟の運転するベンツの後部座席で、関西明石組直系神楽坂組組長・神楽坂 倫一(かぐらざか りんいち)は携帯をスーツの内ポケットに入れた。

ダークのスーツに身を包み、黒髪のオールバック、そして眼鏡。

30代前半のその男の容姿は、極道というより切れ者の弁護士といった風情だ。

その神楽坂が、眉間に深い皺を寄せる。

先程も電話で、椎名に詰られた所だ。

いつまで東京のチンピラ1匹に好き放題やられているのか、早く銀二を捕まえて来いと。

…実際に拳を交えておきながら、椎名は分かっていない。

東京のチンピラ…神楽坂は銀二に対して、そんな過小評価はしていなかった。

確かに立場は只のチンピラかもしれないが、たった1人で明石組ほどの組織を相手に立ち回っている辺り、相当な切れ者だと神楽坂は分析していた。

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