鬼が往く
車は立体駐車場に入り停車する。

既に深夜、人はいない。

神楽坂と舎弟は車を降りる。

と。

「神楽坂 倫一だろ?」

突然の声で振り返る。

そこには、ジャージ姿の金髪の男が立っていた。

「誰じゃワリャア!」

拳銃を抜き、構える舎弟。

しかし神楽坂はそれを制する。

「沢渡 銀二やな。やっぱりキレもんや。俺の名前も、ここに来る事も調べ上げとる。この分やと、俺が明石組直系神楽坂組の組長やっちゅう事も、お見通しやな?」

神楽坂の台詞に、銀二は無表情のまま。

「いつまでも下っ端ばかり的にかけてても埒があかねぇんんでな。あんたを狙いに来た」

「…正直やな」

神楽坂は背広を脱いで、舎弟に渡した。

「来いや小僧。素手喧嘩(ステゴロ)のタイマンや」

銀二と神楽坂、両者はジリジリと距離を詰めていく。

先に動いたのは銀二だった。

得意の左で、一足飛びに神楽坂に殴りかかる!

だが神楽坂は素早くこれを躱した。

銀二は、今度は右のストレート!

しかし神楽坂はこれも捌き、隙を突いて銀二の顔面に拳を叩き込む!

「野郎ッ」

一瞬怯んだものの、すぐに反撃する銀二。

大振りながらも、連打で神楽坂に拳を繰り出す。

が、神楽坂は銀二の拳を悉く躱し、捌き、一瞬の隙を突いて顎への掌底!

「…っ!」

たった一撃で銀二は脳を揺さぶられ、ガクリと膝をついた。

そこへ神楽坂は顔面への蹴り!

「がはっ!」

銀二は吹っ飛ばされ、地面を転がった。

「てめぇ…何かやってやがんな…」

「拳法をちょっとな…」

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