鬼が往く
池袋支部を出た根津は、左手にはめた高級そうな腕時計に目をやる。

まだ帰るには早い時間だ。

少し歓楽街で飲んでいく事にした。

歓楽街の大通りのど真ん中を歩く根津。

最早東京は関西明石組に掌握されていると断言して差し支えない。

その幹部の根津が歩いているのだ。

誰が根津に道を譲る。

根津もまた、当然のように通りを闊歩する。

だがしかし。

「!」

ただ1人、往来の真ん中で根津の行く手を遮る者がいた。

ジャージのポケットに両手を突っ込んで仁王立ち。

一瞬にして、根津はそれが誰なのかを悟った。

「ウチのモンが、よぅけ世話になっとるそうやのぅ、沢渡」

「テメェも世話しに来たんだよ、根津」

銀二は不敵に言ってのけた。

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