鬼が往く
その男…椎名が言った事が聞こえなかったかのように、銀二は近付いて行く。

「わかっとんのかい!関西明石組の若頭なんやぞ?関西明石組言うたら…」

「知るかよ」

話の途中の椎名の顔面に、拳をぶち込む!

鼻血を噴き出し、前歯を折られ、椎名は跪いた。

「喧嘩に代紋(かんばん)出すんじゃねぇ、ヘタレが」

「う…クソがあ…」

鼻を押さえて椎名は立ち上がる。

「ワリャア…顔覚えたからの…覚悟しとけや。地獄の果てまで追い込んで、ぶち殺したるからのぅ!」

負け惜しみのように言って、椎名は走っていった。

…鼻を鳴らした後、銀二は女の方を振り向いた。

「テメェも、女がチョロチョロ夜の街で歩くんじゃねぇ」

「御忠告感謝するわ。でも」

女は懐から身分証明書を出して、銀二に見せる。

「貴方のやった事は傷害罪ね」

< 6 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop