鬼が往く
紗智は銀二の方を向き直る。

歩き煙草は禁止されている。

咥えた煙草を摘まみ取りながら。

「さっきの男…椎名は、関西に本拠地を置く構成員1万人の広域暴力団組織、関西明石組の会長・明石 将臣(あかし まさおみ)に可愛がられている若頭なの」

「虎の威を借る何とか…って奴か。駄目な奴ほど可愛いって言うしな」

銀二が鼻で笑う。

「確かにね…でも問題なのは、椎名の借りている虎の威が、半端なものじゃないって事よ。一声かければ、1万人の構成員が動くわ。相手は関西最大規模の広域暴力団組織よ。一介のチンピラ程度、あっという間に消されるわよ」

「…程度たぁご挨拶だな」

舌打ちする銀二。

「待ってなさい」

紗智はスマホを取り出した。

「警視庁に、応援を頼むわ。『野獣』って呼ばれてる凄腕の刑事を3人知ってるの。巽 英二(たつみ えいじ)に倉本 圭介(くらもと けいすけ)、我妻 武(あがつま たけし)。あの人達が動いてくれれば…」

「余計な事すんな」

銀二は紗智の動きを制した。

「別に俺はいつもと変わらねぇ。普段通りにさせてもらう…逃げる気も隠れる気も更々ねぇ…喧嘩売られりゃいつでも買うぜ」

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