鬼が往く
その頃。

関西明石組池袋支部に帰った椎名は、舎弟に手当てを受けながら電話をしていた。

「おぅ、そうや。組のモンに全員招集かけぇや。あぁ?警察なんか関係あるかい!東京の鬼首會にも遠慮せんでええわ!全員召集かけろ言うたらかけろやボケ!神楽坂も、釘宮とこのも、全員や!」

叩き付けるように受話器を置いて、椎名は立ち上がった。

怒りが収まらない。

関西明石組若頭として、誰もが道を譲り、思い通りにならぬ事など何1つなかった椎名にとって、今回の事は初めての屈辱だった。

あの金髪の男…追い込みをかけて殺してやらなければ気が済まない。

「椎名さん、分かりました」

舎弟が銀二について調べた事を記したメモを渡す。

「…沢渡 銀二…チンピラか…嘗めた真似しくさりゃあがって…」

椎名はメモ用紙を握り潰した。

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