バーカ、お前が好きだよ...。
揺れる麗子の気持ち......
クリスマスの1週間前、司は麗子と2人きりになりたくて学校帰りの麗子を待つ。
「麗子ちゃん!」
携帯を見ながら歩く麗子は、司に気づかなかった。
「ちょっと!麗子ちゃんってば!」
司の大きい声にやっと気づく。
「えっ?」
司は麗子の腕を掴んでいる。
「司くん、こんなとこでどうしたの?」
「どうしたのじゃないよ、さっきから呼んでるのに全然気がつかないからさ」
「ごめん、ごめん」
「歩きスマホは危ないよ。人にぶつかったりするからね」
「ほんとだね、気をつけなきゃ。なんか用事あった?」
「あるから待ってたんだけど?」
司はさりげなく麗子の手を握る。
「今日さ、これから予定とかある?」
「ううん、特に」
「ほんとに?」
「それがどうかした?」
「ちょっとさ、麗子ちゃんと行きたいとかあってさ、どうかなと思って」
「いいけど、どこ行くの?」
「ほんとに!よっしゃ、着いてからのお楽しみ」
「あ、そう」
司はガッツポーズをして嬉しそう。
「ふふ、司くんとうしたの?ガッツポーズなんかしちゃって」
「ちょっとね」
「今日の司くん素直。なんか気持ち悪いっていうか、いつもの司くんじゃないみたい」
「気持ち悪いってなんだよ、それ」
「ごめん、ごめん。冷たい感じが司くんだから」
「それじゃいつも、ぼくが捻くれてるみたいじゃない」
「違うの?」
「違わないかも」
司はとびっきりの笑顔を麗子に見せる。
「司くん...そんな顔もするんだ」
「そんな顔って......あのね、僕だって笑うよ」
「ほんとごめん、そんなカッコイイ司くん初めてみたから」
「なんか照れるな、目の前で言われると」
「じゃ、16:30に駅の改札ね」
「うん」
司と麗子はここで別れた。
「司くん、すごいウキウキしてて可愛い」
麗子も上機嫌だった。
家に着いて、お洒落をして出かける準備をする。外に出ると、風太が家の前で立っていた。
「おい、麗子そんなお洒落してどこ行くんだよ!」
機嫌が悪そう。
「どこって、友達と待ち合わせるの」
「友達は、女?男?」
「どっちだっていいでしょ!用事があるの、じゃあね」
「ちょっと待てよ」
麗子を後ろから抱きしめる。
「お前最近誰と会ってんだよ?」
「別に、友達だよ」
「俺以外の奴と麗子が会ってると思うといてもたってもいられないんだ」
「ちょっと離してよ!」
麗子がいくら言っても、風太は離さない。
「嫌だよ、他の奴のとこなんか行くなよ。だれがお前のこと一番好きか分かってんの?」
麗子は、無理矢理風太の手を離す。
「なにすんだよ!」
「私、風太のこと好きだよ。でも、私のこと干渉しすぎでうんざりだよ。風太のこと嫌いになりたくないから、しばらく距離置こう。お互いのこと考える時間も必要だよ」
麗子は、風太の唇にキスした。
「別れるわけじゃないんだから、ね、そうしよう?」
「分かったよ、行けよ。今日は待たないからな。バーカ」
「ごめん風太」
「謝るんじゃねえよ。さっさと行け!」
寂しそうな顔をする風太。風太を抱きしめたかったけど、ふりきって司の元へ急ぐ。
風太と話をしていたら、待ち合わせの時間ギリギリになってしまった。
「司くん、こめんね。遅くなって」
「良かった、来てくれて。なんかあった?」
「うん、ちょっとね」
「あ、もしかして愛しの彼氏とケンカでもしちゃった?」
「えっ⁉︎なんで...」
「あれ当たっちゃった?適当に言ったんだけど。良かったら話して、そんな顔の麗子ちゃん見てるの嫌だから」
「うん...最近束縛が酷くてさ、どこ行くんだ、なにしてたんだってうるさくて」
「あー、それって言われるほうは嫌だよね、それだけ好きっていうのは嬉しいけどさ。僕だったら、麗子ちゃんをそんな風には縛りつけないな。窮屈だし、いつでものびのびしててほしい」
麗子は司のさりげない優しさに涙が溢れた。
「あれ、僕泣かせちゃった?」
「違うよ。司くん優しいから、嬉しかったの」
「そっか、じゃ僕こういうことしちゃおうっと」
司は麗子をそっと抱きしめる。司の温もりにほっとして号泣してしまう。
「ちょっと、ちょっと麗子ちゃんどうしちゃったの?」
しゃくりあげながら話す麗子。
「司......くん、しばらく......このままでいさせて」
麗子の背中を優しくさする。
「はいはい、僕の胸貸してあげるから、泣きたいだけ泣きなよ」
さらに麗子は泣いてしまう。
「麗子ちゃん可愛いなあ、僕で良かったらいつでも、泣きにおいで」
泣いてすっきりした麗子は。
「そんなに、しょっちゅう泣かないよ。目が腫れちゃう」
「そうだよ、麗子ちゃんは笑ってたほうが可愛いよ」
司は麗子の唇にキスをした。
「ん......司くん。ありがとう」
「僕なんにもしてないよ」
「ううん、したよ」
「じゃ、お楽しみの場所へと行くか!」
「うん、行こう!」
急に元気になる麗子。
「よし!それでこそ椿麗子だね」2人笑い合う。しっかり手も繋いで。