秘書と野獣
野獣はウサギに恋をする
1
「あなたといても未来が見えないの。あなたは私のことなんて好きじゃない。
…さようなら」
…また、だ。
女と駄目になるときはいつも同じセリフを言われる。
熱烈に好きだと言われて付き合ってみれば、いつも最後には決まって俺が振られる形となって終わりを告げる。
未来? そんなもん俺にだって見えねぇよ。
仕方ねーだろ? 一緒にいても本当にその先なんて考えられないんだから。
俺には結婚なんてものは絶対に向かないし、無理矢理したところであっという間に破綻するのが目に見えてる。だったら「今」を楽しく生きりゃあそれでいいだろ? それじゃあ駄目なのかよ。
はぁ…全く女ってのはつくづくめんどくせぇ。
これが密かに野獣と呼ばれている男、進藤猛の専らの口癖だった。