秘書と野獣
とはいえ今後もああいうエロ親父の魔の手が伸びてこないとも限らない。
…というか、ウサギならばむしろその危険性は大いにあると言った方がいい。
俺がいるときなら指一本触れさせねぇが、四六時中一緒にいられるわけでもない。しかし当の本人は自分が周囲からどう見られているかなんてことには完全に無頓着で…どうしたものかと思案した俺は、そこで一芝居打つことに決めた。
中身は至って簡単だ。有無を言わさず膝枕をさせ、あいつが抵抗するのを待つ。
ただそれだけ。
実にくだらねぇと心底思うが、その手のことに免疫のないあいつにはその程度のことでも充分だと思えた。
そうして今と同じようにほとんど命令するような形で膝枕をさせたのだが…
「…どこかお疲れですか? きちんと栄養とって休んでくださいね」
戸惑いながらもあいつが口にしたのはそんな一言だった。
いやいやいや、そこは「何するんですか!」とか「セクハラですよ!」って抵抗するところだろうが!
抵抗はおろか俺の体を労るってどういうことだよ?! お前はバカか!!
そう出かかった言葉が、すんでのところで止まる。
トントンと、まるで赤ん坊をあやすかのようにそっと背中を撫でる手。俺はガキかよ! と激しく叫びたかったが、何故だかその手がやけに心地よく感じた。