秘書と野獣
だから少しでもあいつの負担を軽くしてやりたいという気持ちがなかったかと言えば嘘になる。
あいつがそれを後ろめたく思うのも当然だし、おそらく悲観してもいただろう。
だが俺だってそれだけが目的であいつを引っ張ってきたわけじゃない。
あくまでそれは数多ある理由の一つに過ぎず、元々はあいつの純粋なひたむきさに惹かれたのだ。だから容赦なくしごきまくったし、時に無謀すぎるだろうと思う要求もした。
決して俺の前で弱音を吐くことはなかったが、おそらく見えないところでは数え切れないほどの涙を流していたに違いない。
あいつにとっては相当過酷な環境だったと思うが、それでも歯を食いしばって直面する問題に立ち向かう。厳しい分、できたときにはうんと褒めてやったし、それがあいつの自信となり、より一層成長していく。
そんなウサギの姿を目の当たりにして、俺自身も負けてらんねぇぞと常々刺激をもらっていた。まさにウィンウィンの関係が確立されていたように思う。