秘書と野獣

俺にとって女というのは今を楽しむために必要な存在。それ以上でもそれ以下でもなかった。身軽なときには適当に遊ぶこともあるが、付き合った女には俺なりに誠実に向き合っていたつもりだ。

だがいつも同じ理由でふられて終わる。

俺自身、その理由が思い当たらないわけじゃない。
俺が楽しみたいのは「今」だけで、女が求めているのは「未来」。
そこに決定的な溝がある以上、互いのベクトルは永遠に交わることはない。
自ずと終わりを迎えるのはもう避けようのない事実だった。


俺は結婚というものに何の価値も見出せない。
それどころか自ら自由の翼を引き千切って檻の中に入っていくも同然だとすら思っている。そんな制度に縛られて生きてくのは死んでもごめんだ。


そんな俺が運命の女に出会うなんてことは万が一にもないだろう。


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