秘書と野獣

2



「猛さんってそろそろ結婚とか考えないんですか?」

その日、久しぶりにウサギの弟である慎二と飯を食いに行った俺は、そう言えばと思い出した様に投げかけられた質問にぽかんと動きを止めた。
そんな俺の態度こそが「ない!」と答えたも同然だと思ったのだろう。慎二はどこかで予想していたとばかりに苦笑した。

「俺そんな変な質問してないですよね? 仕事も軌道に乗って落ち着いたみたいですし、年齢的にも適齢期だし。付き合ってる女がいるならそう思うのは普通じゃないんですか?」

「女はいねーよ」
「今はいなくてもそれなりにいましたよね?」
「…まぁ、ほどほどに」

ほどほどって何すかと慎二は笑う。

「俺は結婚はしねーよ」
「…なんでですか?」
「自分が結婚してる姿が全く想像できないからな」

バッサリ言い切った俺に、それまでは笑っていた慎二が真顔になる。

「…こんなこと聞くのもあれなんですけど、猛さんって若干女性不信なとこあります?」
「…どうしてそう思う?」
「いや、見てたらなんとなくっていうか…」

まさかそう思われていたとは。
驚くと同時に、自覚があるだけに妙に納得もしてしまう。

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