秘書と野獣

「女性不信っつーか…結婚そのものに何の価値も見出せないんだよな」

「それは…」
「まぁだいたいはお前が想像してる通りだな。ガキの頃から愛情のない親に育てられると俺みたいな人間ができるってわけだ」
「……」

「俺にとって結婚なんてお互いの人生を縛り付ける足枷にしか思えないからな。そんな俺が無理矢理結婚したところでうまくいくはずがないだろ」

それ以前にしたいと思ったことすらないが。
似たような考えを持つ友人もいたが、その結婚観を根底から覆す相手に出会って、今では幸せな家庭を築いている奴もいる。
だが俺にはそういうことは当てはまりそうもない。とはいえ、いい加減年齢的にも相手に期待するなと言う方が難しくなってきたのも事実なわけで。
こんな俺に残されたのは後腐れのない一夜限りの付き合いだけなのかもしれない。


「……姉貴のことはどう思ってるんですか?」

「___は?」


ぼんやり考え込んでいたためよく聞こえなかった。今何つった?

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