秘書と野獣
「俺の友人で前から姉貴を紹介して欲しいって言ってる奴がいて。年下ではありますけど、人間性は保証します。姉貴も二十代を折り返してそれなりにいい歳になってきましたし、いい加減恋愛の一つや二つしてもいいんじゃないかって。俺の紹介なら姉貴もそう警戒しないだろうし、今度____ 」
「ダメだ」
「えっ?」
「それは許さねぇ」
「え…」
唸るような声でそう切り捨てた俺に、慎二が怪訝そうに顔をしかめた。
「どうしてです? ほんとに悪い奴じゃないですよ?」
「そういう問題じゃねぇ。だめなもんはだめだ」
「だめって…そもそも姉貴のことで猛さんに決定権はないですよね?」
「なくてもだめだ。俺にはあいつを守ってやる義務がある。それに、あいつだってまだ学生に毛が生えたようなもんだろ。恋愛だ結婚だなんてまだはえーよ」
「早いって…姉貴ももうすぐ26ですよ? それに、俺ですら今の彼女との将来を考えてますし。姉貴なら尚更…」
「お前はお前、あいつはあいつだ」
「……」
ああ言えばこういう。
完全に暖簾に腕押し状態の俺に、慎二は心底呆れかえっているようだった。
だが駄目なもんは駄目なんだからどうしようもねぇ。
そこらの男なんかにあいつをホイホイとやるわけにはいかねぇんだよ。