秘書と野獣
ふと目の前の女に目をやる。
まだまだガキだと思っていた女は、こうして見るといつの間にか大人の雰囲気を漂わせる存在へと変わっていた。
容姿も決して悪くはないし、何よりもこいつの魅力はその人間性だ。
そりゃあお近づきになりたいと思う男がいても何ら不思議なことではない。
実際、これまで俺を介してそう望んできた奴だっていた。今のウサギにとって恋愛は負担以外のなにものでもないとわかっているからこそ、そのいずれも本人に伝えることすらせず断ってきたのだが…
こいつの幸せを願うのならば、俺は一切の手出し口出しをすべきじゃないんだろうか。
「どうしたんですか? 何だか元気がないみたいですけど…もしかしてまたふられちゃったんですか?」
「あーまぁな…って、オイ! 違うわっ!!」
「きゃーーーっ!!」
ぐわっと立ち上がってウサギの頭を掻き回すと、驚いたあいつがギャーギャー騒ぐ。心だけが年齢以上に大人になってしまったこいつも、こうしているときは子どものように無邪気な姿をさらけ出す。
その姿を見る度に、何故かほっとしている自分がいる。
こいつの幸せを誰よりも願っている。
だがその一方で、このまま変わらないでいて欲しいと願う自分がいる。