秘書と野獣
「本当にごめんなさい…」
「だからもう大丈夫だっつってんだろ。チビなんだからしょうがねーよ。大目に見てやる」
「チビって…」
「あ? 違ったか?」
「違わ、ないです…」
ぶーっとふてくされた顔がツボだ。
「ははっ! だろ? まー、あとは男に免疫のないお前には刺激が強かったか」
「なっ…?!」
ギョッとしながら真っ赤になっていくのも期待を裏切らない反応だ。
「いい加減お前も男を作る気になったか?」
「もうっ! そういうのはセクハラですよ!」
「お。ちゃんと言い返せるようになったじゃねーか。感心感心」
「こんなことで褒められても全然嬉しくないですからっ! じゃあそちらの書類に目を通しておいてくださいね!」
「はいはい」
「『はい』は一回ですっ!」
お前はオカンかよ!
ククッと笑いながら、ウサギが消えた扉をじっと見つめる。
そのうち、一瞬にして浮かべていた笑顔が消えていくのが自分でもはっきりとわかった。