秘書と野獣
3
「どうした? 今日はやけに時間ばっか気にして」
「えっ?! あ…いえ、なんでも、ないですよ?」
相変わらず大根役者もびっくりなほどに嘘が下手クソだな。
一日中そわそわと落ち着かず、出先から戻る車の中でも腕時計ばかり気にしてるくせに。それで誤魔化したつもりでいるんだから何ともおめでたい奴だ。
「なわけねーだろ。何があった? まさか男と会うとか」
「なっ…?! ち、違うに決まってるじゃないですかっ!!」
「だろうな。じゃあ何なんだよ。お前がそんなだと俺も気になって落ち着かねーよ。言え」
「う……。その…実は、莉緒が風邪で寝込んでて…」
「え?」
「あの、もう病院とかには連れて行ったんです。あとは薬を飲んで熱が下がるのを待つだけなんですけど、やっぱり気になって…。すみません、注意力散漫でしたよね。これからは気をつけ…」
「行くぞ」