秘書と野獣
「何のために俺がいるんだよ、バカ」
吐き出した声は、言葉に反して柔らかいものだった。
こんな声が出せるのかと自分でも驚くほどに。
そうしてウサギの寝顔をどれくらいの時間見つめていただろうか。
少しも目を逸らすことなく見つめているうちに、また俺の中を正体不明の感情が埋め尽くしていく。
温かいような、それでいて胸が苦しくなるような、何かが。
だから一体なんなんだよ。
わけわかんねぇよ。
「………」
自問自答を繰り返しているうちに、まるで引き寄せられるように自分の体が勝手に動いていく。
そうして気がついたときには、熱をもった柔らかな何かが俺の唇に触れていた。