秘書と野獣
「恋愛や結婚が必ずしも幸せに直結するとは思わない。だがね、そこから得られる幸せだって必ずあるはずなんだ。私は彼女にもそれに気付いてもらいたいと思ってるんだよ」
「必ず得られる幸せ…?」
「あぁ。もちろん私だって男なら誰でも許すわけじゃない。平澤君ならと思えばこそだし、どう転ぶかも誰にもわからない。だがきっかけを作るくらいはいいだろう」
その通りだ。そこに異論を挟む余地などどこにもない。
あいつは立派に自立した女で、幸せになる権利がある。
幸せになって欲しい。
わかってはいる。わかってはいるのだ。
「ですが…」
「進藤君。君に彼女の人生を決める権利はないんだよ」
「…え?」
やけに低く響いた声にハッと顔を上げる。