秘書と野獣

「君があの子を心配する気持ちもよくわかる。私だって気持ちは同じだからね。だが結局我々は彼女自身ではないんだ。端から本人にそのつもりがないと決めつけて、片っ端から可能性を潰していくのが果たして本当に彼女のためになるんだろうか?」
「それ、は…」
「もしかしたら彼女は心のずっと奥底に幸せになりたいという強い想いをしまい込んでるのかもしれない。それを出してはいけないのだと自分に言い聞かせて」
「…!」

その言葉はズシリと重く重く俺の心にのし掛かった。
言葉を失い黙り込んでしまった俺に、服部社長はふぅっと軽く息を吐き出す。

「……もしそれでも口を出したいというのならば」
「…?」

その後なかなか言葉が続かず、微妙な間に思わず服部社長を仰ぎ見る。
そうして目が合うと、何故か彼はにっこりと満面の笑顔を浮かべた。



「進藤君、君こそがあの子を幸せにしてやる覚悟を持ちなさい」



「…………え?」

はっきりと告げられた言葉に、すぐにその意味が理解できない。

今、なんと…?

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