秘書と野獣
「他の男では駄目だというなら、他でもない君があの子を幸せにしてやればいい」
そんな俺の心を見透かしたように、さらに強い口調で断言された。
突然のことに絶句する俺を前に、服部社長はフッとその目元を緩める。
彼は、何を…
「何度も言うが私だってそこらの男に任せるつもりはない。こう言うからには相応の信頼があってこそだ。その上で君がどんな結論を出すかも自由だ。もちろん私は私で彼女の幸せをサポートし続けていくつもりだよ」
「……」
それはつまり平澤の息子とは今後も接点をもたせるという意味だろう。
…俺が動かない限りは。
俺が、ウサギを幸せに?
この俺が?
服部社長からこんなことを言われる日が来るとは思ってもいなかった俺は、その後ウサギが戻って来ても尚頭の中は混乱し続け、心配するあいつにうまく切り返すことすらままならなかった。