秘書と野獣
「なんだって急にあんなことを…?」
結局その日はいくら飲もうと少しも酔えなかった俺は、彼らと別れた後に一人行きつけのバーで飲んでいた。
だがお決まりのスコッチを口にしてもやはり何の味も感じない。
困惑と混乱、それだけが俺の中をぐるぐると回っていた。
彼は冗談であんなことを口にする男ではない。それは長年彼を慕い続けた俺が誰よりもわかっている。だからこそ、あれが心からの言葉だというのは紛れもない事実だ。
…この俺がウサギを幸せにしてやればいい、と。
だがその一方で彼は平澤とウサギを今後も引き合わせるつもりだとも言った。
直接の面識はないが、この世界では平澤を知らない者はほとんどいないだろうし、立場に傲ることなく謙虚で仕事もできると専らの評判だ。
服部社長のお眼鏡にかなうくらいなのだから、その評判通りの人間なのだろう。
それこそ、ウサギの相手としてはこれ以上ないと思えるほどの。
だが…