秘書と野獣

「お前好みの物件で構わねーぞ。なんなら今日この後…」

「___なっ、何を言ってるんですか! 社長のおうちですよね? 私なんて全然関係ないじゃないですか!」
「いや、だからこれから先___」
「冗談でも意味がわからないものはやめてください! それに、今は彼女さんがいなくても、いいなと思う女性はいるんですよね? だったらその人が喜びそうな場所にすればいいじゃないですか」
「だから、お前の____」
「もうっ、社長のお遊びにお付き合いするほど今日は暇じゃないんです! それじゃあそちらの決済よろしくお願いしますね!」

「あ、おい、ウサギっ!」

わけのわからない申し出に完全にパニックを起こしたウサギは、マシンガンのように一方的に捲し立てるとそのまま逃げるようにして執務室から出て行ってしまった。

咄嗟に出た右手が空中で行き場を失ったまま停止する。


「はぁ~~~~っ……これは思ったより手強そうだな…」


右手と共にガックリとデスクに項垂れる。予想していたとはいえ、前途多難な先行きに特大の溜め息が出た。

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