秘書と野獣
ウサギを女として好きだ。
…いや、好きだなんて軽いもんじゃない。
___俺はあいつを愛してる。
そのことをようやく自覚した俺は、憑き物が落ちた後のように清々しい気持ちで満たされた。いざ答えに辿り着いてしまえば、何故何年もの間こんなことにすら気付かなかったのだろうかと不思議でしょうがない。
お前はバカじゃないのかと。
だが長い年月がかかったからこそそれが一時的なものではないのだと断言できる。人からすれば無駄だと思えるような遠回りも、きっと俺たちにとっては必要な時間だったのだろう。
そうして一切の迷いのなくなった俺がまず最初に考えたのが引っ越しだ。
特に住居に関するこだわりもなかったが、たとえ一度でも過去の女が入ったことのある空間に居続けるのは違うと思った。元々自分のテリトリーに他人が入って来ることを極度に嫌うこともあって、女が入ったことがあると言っても片手で余る程度しかないのだが。それでも全てを一新したかった。
______いつウサギが俺のものになってもいいように。
だからあいつに打診したのは冗談でも何でもなく、本気であいつ好みの家に移り住めばいいと思っていたのに…