秘書と野獣
「今度は俺が待つ番、か…」
正直もどかしいことこの上ない。
お互い大人でベクトルも向かい合っている。だったらさっさとくっついてしまえばいいだけじゃないかと思う自分もいる。たくさん甘やかして甘い言葉を囁いて、ベッドの上でこれでもかと可愛がる。
多少強引にいけばおそらくあいつは落ちてくるだろうこともわかっていた。
だが、そうしたいとは思わなかった。
いや、すべきではない。
これまであいつの気持ちを無視して散々好き勝手やっておきながら、いざ自覚した途端これまた自分のペースにあいつを巻き込む。それでは意味がないと思った。あいつの心を固く閉ざしてしまったのが俺のせいなら、それをゆっくりととかしていくのもまた俺の責務だ。
たとえ今後同じだけの時間がかかるのだとしても。
俺にできることは誠心誠意あいつに向き合っていくことだけ。
「とはいえそう長く待つつもりもねーけどな」