秘書と野獣

「なんか…猛さん、別人みたいっすね」
「だな。それは俺が一番そう思ってる」
「っていうかいつからなんですか?」
「…いつからなんだろうな。俺にもよくわかんねーよ。ただ、気が付いた時には俺にはあいつ以外に欲しいものなんてなかった。それだけだ」

「……すげぇ。なんか姉貴より先に俺の方が落ちそうっす」
「くっ、バーカ」

「へへっ。…でもマジであの姉貴は一筋縄じゃいかないと思いますよ? ただでさえこういうことに消極的な上に、猛さんが自分を好きになるだなんて死んでもありえないと思ってるはずだから」
「だろうな。既にそこは嫌ってほど思い知らされてるよ。まぁあいつをそこまで追い込んだのも俺だからな。責任持って最後まで面倒見るさ」
「頼みますよ? 早いとこ猛さん達がまとまってくれないと俺も落ち着けないですから。俺に協力できることならなんでもしますんで、遠慮なく言ってくださいね」
「とりあえずあいつに近づきそうな男は全部蹴散らしておけ。あとは自分でなんとかしてみせるさ」

そこまで話したところで身支度を終えたウサギが出てきた。

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