秘書と野獣


「あー美味しかった! 社長、本当にご馳走様でした!」
「満足したか?」
「はいっ!」

腹を満たしたウサギはすっかりご満悦だ。この笑顔を見ているだけで、ほんの少しささくれ立っていた心が驚くほどに凪いでいく。
急激に湧き上がってくる感情を抑えきれずに、思わずウサギの頬へと手を伸ばしていた。撫でた瞬間、ウサギがビクッと怯えた顔で肩を竦める。

「顔、赤くなってる」
「あ…ちょっと、飲み過ぎたのかもしれません…」

尚も手を離そうとしない俺に、ウサギはおろおろと視線を泳がせながらやがて顔を違う意味で赤く染めていく。

…あぁ、今すぐにでも抱きしめたい。


「なぁ…俺の家に来ないか?」
「…へっ?」


へっ?って。リアクションするにしてもよりにもよってそれかよ。

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