秘書と野獣

「このまま俺の家に来いよ」

「…………なっ、ななっ？？！！　何言ってるんですか！」
「俺は大真面目だけど？」
「知りませんっ！　行きませんっ！　っていうかもう手を離してくださいよ！」

ぼぼぼっと顔を真っ赤に染めると、今度はぷりぷりと怒り出した。
この後に続くセリフなんて予想がつく。大方、「そういうことは意中の女性だけに言うものです！」とかなんとかそんなところだ。

「もうっ、そういうセリフは…」
「お前だから言ってんだよ。つーかもうお前以外には言わねーよ」

「え…？」

思いの外真剣な声色に驚いたのか、ピタリと動きを止めたウサギが戸惑いを滲ませながら俺を見上げる。俺の言葉の真意がわからない、目でそう訴えながら。


「金輪際お前以外の女は誘わないし興味もない。ウサギ、お前だけだ」
「＿＿＿＿」


絶句した後、どうしていいかわからなくなったウサギは気まずそうに視線を逸らした。

何故、どうして、ふざけてるの、信じられない、そんなことあるはずがない。
その表情からこいつの頭の中を駆け巡る言葉が手に取るように伝わってくる。