秘書と野獣


「ご婚約指輪ですか?」

「え? あ…はい、そうです」
「こちらのデザインは花をモチーフにした世界に一つしかないものなんです。本来中央にピンクダイヤモンドを置くところを脇に配置するという敢えてのこだわりがあるんですよ」
「花…」

全体を見ると確かに大輪の花が浮かび上がってくるようだ。

花と華。ただの偶然だとは思えないくらいに惹きつけられてしまう。

「…これは一点ものなんですか?」
「はい。デザイナーのこだわりで一点しか作られておりません。我が社はありがたいことに世界中に支店がありますが、この指輪に関しては当店だけの取り扱いとなります。まだ入荷したばかりなんですよ」
「……」

世界にたった一つしかない。
世界でも有名な店であるにもかかわらずこの指輪だけは一つしか存在しない。
全ての条件が運命的なものに思えた。



「これを婚約指輪にしたいんですが」



すっかりその指輪の虜になった俺は迷うことなくそう口にしていた。

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