秘書と野獣
そうして全ての手続きを終えて店を出た俺の気持ちは当然のように昂ぶっていた。
この気持ちのままあいつのところへ行ってプロポーズしてしまいたい。
とはいえ細かい仕様を頼んだ指輪が手元に届くまでにはもう少しの時間を待たなければならない。なんとももどかしいが、一生に一度のプロポーズくらいきちんと決めたい。くだらないかもいしれないが、それが男としてのプライドだ。
それでも会いたいという想いはおさえきれず、アポなしではあるがあいつに会いに行くという選択肢に迷いはなかった。
「なんか食いもん持って行くかなー」
時間的には既に夕食を終えている可能性が高いが、ちょっとつまめるものやデザートなら間違いなく喜んで受け取るだろう。
それに突然の訪問になんでどうしてと困惑するのが目に見えてるだけに、色気より食い気のあいつを黙らせるにはこれが一番手っ取り早い。
「デパ地下あたりに行くか…」
自分一人じゃまず行かない場所だが、とりあえずデパ地下なら女が喜びそうなものが一度に手に入るだろうと結論づけ、ここから一番近いデパートへと向かうことにした。