秘書と野獣
「 ! 」
そんなことを考えたその瞬間、ふらりとこちらを振り返ったウサギと正面から目があった。バチッと音がしたのではないかと思えるほどに絡み合った視線に、最初こそぼんやりしていたあいつの瞳が瞬く間に見開かれていく。
スローモーションのようなその動きに、あいつが俺だと認識したことを確信した。
あまりの驚きに目を逸らすことも、おそらく息をすることすら忘れて固まっているあいつにフッと微笑みかけると、手にしていたグラスと共に席を立ち、そのまま吸い寄せられるように歩いて行く。
やがて隣のスツールに腰を下ろすなり面白いほどにガチンと体を硬直させたウサギに、さてどうしたものかと考える。
そんな別人みたいな格好で一体何をしてる? 直球で聞いてしまおうか。
だが聞いたところで実は…なんて素直に白状するとも思えない。
ならばここは少し遊んでやろうかと悪戯心が湧き上がった。
「一緒に飲みませんか?」
「_____え?」