秘書と野獣


この夜、俺は数え切れないほどあいつの名前を呼んだ。
それと同じくらい、あいつも俺の名を叫び続けた。

本来することが望ましいであろう避妊も、今更俺たちには必要のないことだと思えた。どうせこの先一生離れることはないのだ。たとえ今夜子どもができたのだとしても、それはそれで喜ばしいこと。
子どももひっくるめてあいつを一生大事にして離さない。
こんな自分が親になった姿など想像もつかないのが本音だが、こいつとならばそれもまた楽しみだと思えた。


すっかり夜も更け、ぐったりとシーツに身を沈めたあいつの体を拭いながらそんな未来図を思い浮かべて笑いが零れる。

あれだけ結婚や家族を想像できなかったこの俺が。
結婚など忌まわしいものでしかなかったこの俺が。

その日が来ることをいまかいまかと待ちわびる日が来るだなんて。
本当に、夢にも思わなかった。



だがこんな自分も悪くない。

___隣に華がいてくれるのならば。



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