秘書と野獣
それは全て俺が相手だったからこそ。
だからこそ俺はあいつの意志を何度も確認したし、その上で抱いた。
俺の愛情を全てあいつに注ぎ込んで、弱気になったあいつが夢だなんて言い出せないように、所有の証をこれでもかと刻み込んで。
だというのに、ようやく新しい一歩が踏み出せたと俺が喜びに震える一方で、あいつは最初からあの一度きりで終わらせるつもりだったのだ。
そのことが堪らなく許せなかった。
この期に及んでまだ現実から目を背けようとするあいつが。
俺の気持ちなど見向きもせずに勝手に決めつけているあいつが。
正面からぶつかることもせず全てを終わらせようとしているあいつが。
その全てが許せなかった。
…いや、悲しくてたまらなかった。
これまで俺たちが築き上げてきたものは一体なんだったのか。
ようやく、ようやく通じ合ったと思えたのに____
「…今さら逃げられると思うなよ」