秘書と野獣
「…え…進藤さん? えっ、急にどうしたんですか?! …まさか、おねえちゃんに何か____ 」
「悪い。そうじゃねぇんだ。…お前に大事な頼みがあって来たんだよ」
「大事な頼み…?」
「あぁ。急で申し訳ないんだが」
「…わかりました。散らかってて申し訳ないですけど、どうぞ上がってください」
ある日突然何の前触れもなく自宅を訪ねてきた俺を、莉緒は深くを追及することなくすんなりと受け入れた。おそらく俺がいつにも増して真剣な眼差しだったことを感じたのだろう。
そしてどんな内容であれ、ウサギに関する話なのだと気付いたに違いない。
「紅茶で申し訳ないんですけど…どうぞ」
「サンキュ。ほんとに急で悪いな」
「いいですよ。進藤さんがわざわざ足を運ぶなんてそれだけ大事な話があるってことでしょうし」
ふふっと笑うと、莉緒も向かいの席に腰掛けて本題は何かと緊張の面持ちで待ち構える。俺は何も言わずに胸ポケットに手を差し込むと、そこから取り出した一枚の紙を静かにテーブルに置いた。
首を傾げながら視線を落とした莉緒が、すぐに驚愕して俺に視線を戻す。