秘書と野獣
「本当に嬉しいっ…進藤さん、ありがとうございます…!」
「いや、お礼を言うのはこっちの方だ。…まぁこんなもの持ってきといてなんなんだが、実はまだあいつへのプロポーズはしてねぇんだよ」
「えっ?」
莉緒が驚くのも無理はない。どう考えても順番が逆だからな。
「言っとくが俺なりに必死にアプローチはしてきたぞ。ただ何をどうやってもあいつがそれをスルーしやがるってだけで」
「あぁーー……はい。なんかほんとすみません…」
そんな姉の姿が想像がつきすぎるのか、何故だか莉緒が頭を下げる始末。
「いや、もとはと言えば俺が悪い。長年女扱いされてなけりゃああなるのも当然だ」
「んー、でもおねえちゃんの場合それだけじゃないっていうか…。かなり手強いですよね?」
「どころの話じゃねーな」
「ですよね…」
はははと苦笑いする莉緒も責任の一端が自分にあると思っているに違いない。
ウサギは人の幸せのために自分を抑え込むことが当たり前になってしまったのだと。