秘書と野獣
恐怖に震えながらもそれらしい言葉を並べて立ち去ろうとするウサギを再びベッドに押し倒すと、あいつが身につけていたものを力の限りに引きちぎった。ブチブチブチッと音をたててボタンが吹き飛んでいく。何が起こったのか理解できずにいるあいつを尻目に布の切れ端を見てニヤリと笑うと、これまで怯えていたウサギが初めて怒りを露わにした。
そうだ。もっと怒れ。もっと心の内をさらけ出せ。
俺が全てを受け止めてやるから。
追い詰めていくごとにあいつの感情が乱れていく。
怒って、泣いて、叫んで、泣いて。
これまであいつを守り続けてきた鉄の城壁がポロポロと崩れ落ちていく。
「私は社長の足枷になりたくない。傍にいたらあなたに迷惑をかけてしまう。だからいなくなるしかないんですっ!!」
それでもギリギリのところで踏みとどまろうとするこいつは本当に凄い奴だと思う。だがそれこそが見えない鎖となってこいつを雁字搦めにし、掴めるはずの幸せを遠ざけている。
本当は違うだろう?
俺のためだと言いながら、お前は自分が大事で逃げ出したいだけなんだよ。
____昔の俺と同じなんだってことに早く気付け。
そのために今こそ全てをぶっ壊してやる。
「それだけじゃ足りねーな。全部吐き出せっつっただろ」
とどめとなった一言に、最後の最後まであいつを繋ぎ止めていた理性の糸がプツリと切れた。