秘書と野獣
「___っ、だったら全部言いますよ! 社長が言えって言ったんですからね?! 聞いた後で迷惑だ何だって言われても一切知りませんから! えぇえぇ、社長の考えてる通りですよ! 私はあなたのことが好きなんです。好きで好きで、どうしようもないくらいずっと好きなんです! だから幸せになるあなたの傍にいるのなんて耐えられない。あなたの傍で死んだように生きるくらいなら、あなたのいない世界で一人で生きていった方がいい。だから逃げました! バカで愚かだってわかってる。わかってるけど私にはこうすることしかできなかったんです! これで満足ですかっ?!!!」
息継ぎもせずに吐き出したウサギの本音。
泣き喚きながらの余韻もへったくれもないその告白に、たちまち俺の背中から全身に震えが走り、そして次の瞬間にはえも言われぬ感動が襲いかかってくる。
あぁ…ようやく…ようやくお前の心が見えた。
紛うことなきお前自身の言葉で。
「ククッ…はっはははははっ!」
…やべぇ。幸せ過ぎて笑いが止まらねぇ。
鼻水垂らして呆気にとられるこいつに全ての種明かしをしてやらなきゃと思うのに、待ち望んでいた一言は思っていた以上に俺をバカにしてしまったらしい。
が、いい加減こいつを楽にしてやらなきゃな。
あの夜から2ヶ月、引いては俺を好きだと自覚してからの年月、こいつはひたすらに耐えてきたのだ。
その一方で俺の幸せを一心に願いながら。