秘書と野獣
「ん…」
指の腹で頬をなぞると、身を捩ったウサギが無意識に俺の胸に擦り寄ってくる。その仕草一つでまた体が熱を持ち始めるが、既に抱き潰されたこいつにはさすがに酷だと理性を総動員して抑え込んだ。
今度こそ本当に。
ようやく真の意味でお前と繋がることが出来た。
喜びに満ち溢れた姿をしかとその目に映しながら、体と心の深いところに互いの全てを刻み込んだ。
もう二度と一夜の幻だなんて思えないほどに、強く、深く。
「冗談でも逃げ出したりすんじゃねーぞ」
あの時の天国から地獄への転落は今でもトラウマとなっている。
本当に、あの時の絶望感たるや…思い出すだけでも吐きそうだ。
おそらく世間からすればワンマンな俺にウサギが一方的に振り回されている構図に見えているに違いない。
だが実際のところ振り回されてるのは確実に俺の方だ。
この俺が、たった一人の女を手に入れるのに何年もの間右往左往させられているなんて。