秘書と野獣
「わぁーーーーっ! きれーーい! きれい、きれい、きれーーーいっ!!!」
壊れた機械の様に同じ言葉を繰り返す莉緒に思わず苦笑いする。
「お前は綺麗以外の言葉を喋れねーのかよ」
「だって! ほんっとに綺麗なんだもん! じゃあ進藤さんは今のおねえちゃんを見てどう思うんですか?」
「……まぁ、綺麗だな」
「ほらーーーっ、でしょう? おねえちゃん、ほんっっっとーに綺麗だよ!!」
「あ、ありがとう…」
妹の勢いにやや気圧されつつも、ウサギも本当に嬉しそうに顔を綻ばせる。
莉緒がここまで興奮してしまうのも無理はない。
今日のあいつは本当に綺麗だから。
今俺の目の前にいるのは、純白のウエディングドレスに身を包んだウサギ。
既に入籍を済ませていたこともあり、ウサギは特別なことは何もしなくていいと言ったのだが、莉緒と俺が断固としてそれを認めなかった。莉緒はともかく、あれだけ結婚そのものを毛嫌いしていた俺が必死になって説得するだなんて、本当に人生ってのはどこでどう変わるのかわからないものだなとつくづく思う。