秘書と野獣

長年培ってきた性格故、あいつにはどうも貪欲になるという意識が欠けている。
もっともっと欲張っていいんだと言って聞かせる俺に、「私にとっては猛さんとこうして一緒にいられることが一番欲張りなことなんです」なんてとんでもないノロケをぶちかましてくれ、当然の如く俺の理性はぶっ壊されて____


…とそれはさておき。
せめてごく内輪の式とパーティだけでもとの周囲の説得の末、入籍してから3ヶ月が経った今日、ようやくこの時を迎えることができた。

ドレスに負けないほどに透き通るような肌のウサギは夫の贔屓目抜きで本当に綺麗で、これまでよく誰のものにもならずにいてくれたものだと心の底から安堵する。
本当に、俺は一生こいつには頭が上がらないだろう。

俺と同じ独身貴族を貫くと思っていながら戦線離脱していった友人達の言葉が今になって身に染みる。


『 本気で好きになったら余計な御託なんて並べてられない。頭で考えるよりも先に本能が動くんだよ。自分が何を求めてるのか、どうしたいのかってね。いつかお前にもわかるときがきっとくるさ 』


あぁ、本当にそうだな。
バカバカしいと鼻で笑っていた自分こそを笑い飛ばしてやりたい気分だ。

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