秘書と野獣
「おねえちゃん、もしかして具合悪い? 少し顔色が悪いけど…」
莉緒の心配そうな声に、物思いに耽っていた意識が戻ってくる。見れば確かにウサギの様子が少しおかしい。
緊張のせいだとばかり思っていたが___
「おい、大丈夫か? もし本当に具合が悪いなら___」
「だ、大丈夫! ちょっと緊張してるだけですから!」
「でもここんところメシもあんま食えてないだろう? 式よりもお前の体の方が大事だ。今日は無理せず…」
「本当にっ、大丈夫ですからっ!!」
「……おねえちゃん、もしかして赤ちゃん出来たんじゃない?」
ぽつりと呟かれた一言に、やいのやいの言い合っていた俺たちの動きがピタッと止まった。驚いた俺の視線が莉緒とウサギの間を行ったり来たりして、そして最後にはウサギの顔を凝視する。