秘書と野獣
「 お前は隙だらけだからな 」
聞き捨てならない一言にピクリと体が反応する。
「…どういう意味ですか?」
「そのまんまの意味だよ」
なんか…あんまりだと思うのは私だけ?
確かに油断していたと言えばそうかもしれない。でも、彼が紳士的だったことに嘘はないし、私の中でもあの出来事は切なくはあっても決して嫌なものとして刻まれてはいない。
だって、私は叶わぬ想いがどれだけ辛いものであるかを知っているから___
「…そんな言い方しなくてもいいじゃないですか。平澤さんは最後まですごく優しかったです」
「ふん、下心がある男なんてそんなもんだろ」
その言い草にはさすがにカチンときた。
「……そうやって社長も意中の女性に優しくされてたんですもんね」
「…何?」
___あ。やばい。
たまには私だって反撃の1つや2つくらいと思って放った一言が、まるっきりそのまま自分への大ダメージとして跳ね返ってきてしまった。
しかも言い過ぎたと思っても既に言ってしまったことを消すことはできない。