秘書と野獣

社長相手に言いすぎだと自覚していても言わずにはいられない。
たとえゲンコツが落ちてこようとも、私の言ってることは間違ってないっ!!


「……だから大バカだっつってんだよ」
「……え?」

けれど、予想に反して降ってきた声は柔らかい。

「これほど大事に誠実にしてる男に対して何言ってやがる」
「…は? 何言って…」
「あれだけ俺の愛情を刻みつけてやったのに、お前はまだわかってねーのか?」

「……」

…?
本当に何を言ってるのか全くわからない。

そんな私を見るなり、あらためて社長は呆れたように溜め息をついた。
そうして何を思ったか、おもむろに体を覆っていたジャケットを開いて私の剥き出しの胸を露わにする。

「ひぃっ?! なっ、何をするんですかっ!! やめっ…!」
「さすがに二ヶ月経ってると残ってねーか」
「…はぁ?」

「忘れたとは言わせねーぞ。ここに、ここだけじゃねぇ。お前の体という体中に俺のもんだっつー証を刻み込んでやっただろうが」
「はぁっ?! だからなにいっ……、 ______!!!」




_____ まさ、か…





私が何かの可能性に思い当たったのに気付くと、社長はニヤリと笑って耳元でこう囁いた。








「 あれだけ激しく愛し合ったのを忘れたのか? ____ 『 ナナ 』 」







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