秘書と野獣
「もう納得したか?」
ポンポンといつものように頭を撫でられて視界が滲んでいく。
「…っ、スイートルームに、行った…! ショックだった…!」
甘やかされて、私はどんどん我儘で貪欲になっていく。
「バーカ。お前まさか俺がいつもあんなことしてると思ってんのか? んなわけねーだろ。スイートなんて利用したこともねーよ」
「じゃあ!」
「俺とお前にとって最初の場所になるんだからそうしたいってのは男としての当然の心理だろ? それに、お前にとっちゃ初めての経験になるんだし。少しでもいいものにしてやりたいって____」
「はっ?!」
「…あ?」
い、今、なんて…?
「あぁ、お前が初めてだなんてとっくの昔に知ってるっつーの。今更恥ずかしがることでもねぇんだから気にすんな。つーかむしろ初めてじゃなかったらコロス」
物騒なセリフに一瞬背筋が凍ったけれど、次の瞬間には得も言われぬような喜びへと変わっていく。
「け、結婚するって言ってたのは…」
「するだろ? なんだよ、お前はしたくねーのか? まぁ、嫌だっつっても逃がさねぇけどな。金輪際二度と逃げようだなんて血迷ったこと考えないように、またここにたっぷり注いでやるだけだ」
「え…」