秘書と野獣


初めて愛されたあの日、私は喜びと絶望を知った。
そしてこの日、私はただただ愛される喜びを知った。

…そして。
いかに自分の認識が甘かったのかを思い知った。

この男は紛う事なき野獣なのだと、
野獣が野獣たる所以を身をもって思い知らされた。


頭のてっぺんから足の先まで、体という体中を貪り尽くされ、もう無理だと泣いて懇願しても決してその手を緩めることはなく、獣はその宣言通り骨の髄まで私を食べ尽くしたのだ。

今ならこの世界に私ほど捕食される動物の気持ちが理解できる人間はいないと自信を持って言える。

…けれど、あれほどまでに幸せそうに食べ尽くしてくれるのならば。
私はいつでも喜んでこの身を捧げようと思う。






「 はっ……! 愛してる……華… 」






愛の言葉と共に囁かれた名前をしっかりとこの耳に刻みながら、やがて私は幸福の海の中へと沈み込んでいった____

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