秘書と野獣
「い、いたっ…ちょっ、やめっ……あっ…!」
と、ばっちり歯型がついたであろう場所を今度は生温かいものがゆるりとなぞっていく。見ればうっすら目を開けた野獣がこちらをじっと見つめたまま、僅かに笑みを浮かべながら指に沿って舌を動かし続けていた。
半分寝ぼけ眼のその姿は逆に色気を増幅させていて、鼻血を噴きそうなほどの超絶フェロモンに、私の顔は一瞬にして真っ赤に染まった。
「あ…あっ…」
「どうしたウサギ。朝からやらしー声出して。たっぷり餌をやったのにまだ腹一杯になってねーのか?」
腹一杯という言葉がやけにリアルに響いて、頭から火を噴きそうだ。
「やっ…やらしいのは社長の方ですっ!! あぅっ…!」
「だから社長じゃねぇっつってんだろ」
ガブリともう一度噛まれると、今度は指が抜けるんじゃないかと思うほどに強く吸い上げられた。一本ずつ順を追って行くように舐められ、最後には薬指を執拗に攻められる。
目眩がしそうなほどの光景に、お腹の辺りがズクンと疼いた。
「お前はまーだ夢だとかアホなこと考えてんのか?」
「……え?」
ぽーーーっとする頭で目を動かすと、いつの間にか攻撃をやめていた獣が真っ直ぐにこちらを射貫いている。
そのあまりにも真剣な眼差しに、一瞬にしてこちらの目が覚めるほど。
「散々夢じゃねぇっつっただろ」
「う…は、はい…」
「ったく。どうしてお前は自分の事になるとそんなに弱気になるんだよ」
「たっ!!」
ペシッとおでこを弾くと、社長はムクリと上半身を起こした。
惜しげもなく晒される肉体美に、恥ずかしいながらも思わず釘付けになってしまう。昨夜は…というかほとんど夜明けまでこの人の腕の中に抱かれていたのだと思うと、悶えるほど恥ずかしくてたまらない。