誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。



〈今日はちゃんと出席しなさいよ?〉



「いつも出席はしてるよ。
ただ授業には出てないだけ。」



〈それは欠席と一緒じゃない……。〉



「冗談だよ。ほら、こうして教室まで歩いてるじゃん。」



まだ生徒がいない朝の学校は静かだ。



あと1時間もすれば段々と騒がしくなるのに、今はそんなこと微塵も感じられない。



〈だからってこんな早く登校する必要ないじゃない。〉



「他の生徒たちに囲まれて登校すると、絶対変な瞳で見られるでしょ。」



フード被ってて肩には猫を乗せてる生徒なんて、世界中どこを探しても俺しかいないよ。



教室を見回してみるけど、よくよく考えれば1回も授業出てないから自分の席が分からない。



「俺の席どこだ……?」



困ったな。



クラスメイトが全員着席するまで俺は立ってなきゃいけないのか?










ガラガラーー



「お?誰だお前……って、もしかして剣城か?」



誰だお前って言われても、こっちもあんた誰だってなるわ。



30代のそこそこ顔が整ってる感じの人。



気だるけそうな感じが大人っぽいような……。



こりゃあ共学だったらモテそうだな。



全然見たことない人だけど、とりあえず頷くことだけはしておく。



「へぇ、お前があの代表挨拶すっぽかした剣城か。」



あのってなんだ、あのって。



「俺はここのクラスの担任、神城(カミジョウ)だ。
ずっとお前だけ来なくてな、成績優秀でも不良なんだな。」



なんか全然説教されてる気がしない。



どうでもいいけど、とりあえず言っとこうみたいな。



「そういや、お前の席そこな。」



そういって神城先生が指さしたのは、窓側の一番後ろの席。



すごいラッキーだな。



あそこだったら誰にも絡まれることなく寝れそう。



「あ……ありがとう、ございます。」



「……おう。じゃあ、今日は出席しろよ。」



神城先生はドアに、俺は自分の席に向かって歩き出す。



「おい。」



背中にかけられた言葉に振り返る。



「殻を作るなよ。
それはお前自身を苦しめるだけだ。」



殻……?



何のことだかさっぱり分からない。



ただ、神城先生のただならぬ雰囲気に俺は無言で頷くしかなかった。



「あと、フード被って授業受けることとその子猫ちゃんは特別に許してやるよ。」



他の先生にもテキトーに言っといてやるから。と言って神城先生は教室を出ていった。



(なんだったんだろう……?)



〈まぁ、いずれ分かるんじゃないかしら?〉



「ビビは神城先生の言葉の意味が分かるの?」



〈私が言ったら、あの人のクイズが台無しになるじゃない。自分で考えてみたら?〉



クイズ……ねぇ。



自分の殻ってなんだろう。














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