誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
「おーい、剣城。大丈夫かー?」
「ぁ、……はい。」
神城先生が出席を取っているのを聞き流しながら、横を盗み見る。
一見どこも不自然なところはなく、ただの男子高校生に見える。
ていうか、会ったこともないのに好きってどういうこと……?
それに……少し、直感で感じた。
"今泉に関わってはいけないんじゃないか"と。
それは護り屋としてなのか、それとも神城先生の言ってたクイズに関することなのか、そこまでは検討がつかなかった。
(ねぇ、今泉のことどう思う?)
〈別に普通じゃない?〉
ビビもあまり感じないか……。
だけど、やはり警戒しとく必要があるな。
他の人と違って話しかけてくれたのは少し嬉しかったが……、
(って、ないない。
優先すべきは感情じゃなくて関わらないことだ。)
そこだけは見失わないように……。
そう真琴が思っている時、ビビが複雑な瞳で見ていたことに気づかなかった。
「ねぇ、一緒に移動しようー!!」
「お昼一緒に食べない!?」
「この問題どーやって解くか分かる?」
なんだこれは。
今日1日、今泉がなぜか俺の近くにいる。
昨日の自己紹介で終わりかと思ったが、その考えは甘かったらしい。
少し逃げようとしてもすぐ見つかってしまうのだ。
やっと1人になれた時には、既にヘトヘトだった。
「今泉はどうしてあんなについてくるんだ……。」
〈真琴と仲良くなりたいからじゃないの?〉
「俺と……仲良く?」
〈初対面で告白してきたくらいだものね。〉
あぁ、それは確かに言えてる……。
でも、俺と仲良くなりたいって……。
〈別にいいんじゃないかしら?〉
「何が?」
〈真琴のことだから、護り屋のことで巻き込みたくないからこっちでも誰とも関係を持とうとしないんでしょう?〉
ビビの言うことは最もだ。
いつ、どんな状況になるかも分からない。
今はまだ護り屋が俺だとは誰も気づいていないけれど、いつかバレてしまった時、何が起こるか。
そしてその時、俺は友達を護りきれるのか。
そんなの、想像すれば結果なんて見えてくる。
なら、誰とも関係を持たなければいい。
その方が幾分かマシなんじゃないだろうか。
「誰かを傷つけるよりよっぽどマシじゃない?」
〈それで真琴が傷つくなら意味がないじゃない。〉
「俺は……別に傷ついてなんか。」
誰かといたいなんて思うわけない。
いなくなった時の絶望感はもう随分味わった。