誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
「真琴は?」
その言葉に、初めて桜悠の心の端が見えたあの日の屋上でのことを思い出した。
【……俺は、周りに不幸しか与えない。
それを自覚して、経験しているから、1人でいい。】
今は……どうなんだろう。
真実を知っても、結局は周りに不幸をばらまいていた。
自覚しているつもりでも、経験していたつもりでも、私は何も見えていなかった。
その後悔はこれから先、消えることはないだろう。
でも、後悔ってそういうものだと思う。
消えないからこそ……次はそうならないように工夫する。
後悔は、次への鍵だ。
「1人は嫌いだよ。
だって、みんなが温かさを教えてくれたから。」
「フフッ、そっか。それを聞いて安心したよ。」
そして私は、楽を見る。
「楽。あの日の賭け、今使ってもいい?」
あの日、ゲームでした賭け。
ずっと保留にしていたけれど、ようやく使う時がきた。
「うん、いいよー?」
「結局、私には楽を苦しめている何かを知ることも、支えてあげることも出来なかった。
今はそれが悔しい。
だから……この戦いが終わったら、またゲーセンに行こう?」
君は孤独じゃない。
だから……1人で何でも頑張ろうとしないで。
今まで1人で頑張ってきた分、もうそろそろ……誰かに分けてもいいんじゃない?
「……フフッ、今度は勝つからねー?」
その言葉に、私は笑顔で頷いた。
「桜悠も楽も、無理はしないで。」
そう伝えると、私たちは2人に背を向けた。
上へ……上へ、登らなきゃ。