誰かを護れる、そんな人に私はなりたかった。
「……真琴、お前は必ず上にいけ。」
「……来都?」
「……あいつを救えんのはお前だけだ。
俺たちのやってきたことは決して許されることじゃねぇ。
だが、兄さんならきっと……あいつを救ってほしいと言うから。」
そうだ……。
私たちは今日で一度"死ぬ"んだ。
今までの自分を捨てて、新しい自分になる。
罪を償う。
きっと、自分を犠牲にして私たちの道を作ってくれたみんなも……そういう気持ちなんだと思う。
「……分かった。」
「だから、ここは俺が引き受ける。」
そういって来都が見据えた先には、帝王がいた。
フードを被り佇むその姿に、記憶の中にいるその姿を重ねた。
「……うん。無理、しないで。」
「あぁ。」
私は帝王たちに背を向けた。
ごめんね。
本当はもっと早く見つけてあげたかった。
もう少し早ければ、こうやって出会うこともなかったのかな?
いや、元はと言えばあの日からもう人生は変わっていた。
「真琴。」
呼び止めると、来都は何かを投げてきた。
片手で掴んでみると、それはチェーンがつけられた指輪だった。
「……これ……、」
覚えている。
記憶の中にこの指輪は確かに存在する。
誰がつけていたのかも、どれほど大切にしていたのかも。
あの時、呉都さんは言った。
【この指輪は、俺のケジメだ。
これを嵌めている限り、俺はずっとお前のそばにいるし、護ってやる。】
あぁ、まただ……。
こうやって呉都さんの何かに触れるたびに、呉都さんがくれたたくさんの言葉が溢れてくる。
「俺は、俺の意思でここにいる。
お前もお前自身の意思でここにいる。
兄さんとかそういうの抜きでだ。
お前の居場所はここだ。
だから……ちゃんと戻ってこい。」
来都はきっと初めから気づいていた。
この決着がついたら、私がいなくなろうとしてることを。
だから……私たちの関係に"約束"という形で終わらないようにしている。
「……ありがとう。」
その約束に"うん"とは言えなくて。
だから、その代わりに感謝の言葉で隠す。
そして私は階段を登った。
呉都さんの指輪を、左手に嵌めて。
ラスボスを倒しにいくために。